Your browser does not support our video. はじめに 今回の動画では、DCF法を活用して実際に企業評価を行っていきます。 複雑な計算と思われますが、ステップに分解してそれぞれ把握することでしっかりと身につけていきましょう 今回の学習ポイント 今回の学習ポイントは、 DCF法による企業価値評価の流れを理解する【前編】 となります。 それでは早速学習を進めていきましょう DCF法の算出ステップ まず、DCF法の算出ステップですが、大まかにこのイメージの5つのステップとなります。 FIRST STEP 事業計画の精査SECOND STEP FCFの算出THIRD STEP 割引率の算定FOURTH STEP 事業価値の算定FIFTH STEP 株主価値の算定 前半となるこの動画では、DCF法の算出ステップの中でもFIRST STEP、SECOND STEPのお話をしていきます。 事業計画の精査 & FCFの算出 おさらいになりますが、DCF法は事業計画をベースとして、現在価値に割引処理した将来FCFの総和から事業価値を求めます。 事業計画は、売主から共有いただくものですが、事業計画の数字で評価額が大きく変わるため、しっかりと精査を行う必要があります。 中小のM&Aの場合、事業計画が無いというケースも中には存在し、M&Aの際に売主とアドバイザーで作成する必要が出てくる場合もあります。 事業計画についてはKPIについて細かく設定し、「通常ケース」「楽観ケース」「悲観ケース」などで3パターンほどを用意することで評価額の範囲を算出するのが理想です。 また、売主から提出される企業価値評価のベースとなる事業計画は、譲渡後における売主の「コミットメント」とも捉えられるので、引継ぎ時や成約後の観点からも現実とかけ離れないように注意しましょう。 事業計画の精査 & FCFの算出(売上高) それではまず、簡略化したものとなりますが、DCF法で活用する5ヵ年計画の例を見ていきましょう。 この例は、売上1億円で毎年の売上高成長率を5%固定と仮定した計画となります。 実際に詳細に事業計画を見ていくときは、売上を作る構成要素を洗い出し、構成要素のKPIを設定することで、通常ケース、楽観ケース、悲観ケースなど作成していくフローとなります。 売上について例にとって、どのように通常ケース、楽観ケース、悲観ケースなどの想定シナリオを作っていくのか細かくみていきましょう。 KPIの設定の例ですが、まず対象企業の中の事業を分解し、各事業の売上がどのように作られているか、顧客獲得は営業なのか、マーケティングなのか、それぞれのチャネルでどういった体制、媒体なのかなど分解しながらKPIを設定していくことが求められます。 営業の KPIを一つ例にとってみますが、分解すると、一人当たりの目標獲得件数があり、スタッフの人数、そしてサブスクビジネスだとすると、毎月の解約率があるのでそれらを考慮すると、1ヶ月あたりの純増数が求められ、その件数をもとに、当月売上の計画が求められることになります。 また、営業一人当たりの獲得件数などについては、例えば、一人ひとりの年間目標売上などから逆算する手法も考えられるでしょう。 このように、売上を構成する要素をそれぞれ分解し、この中で、獲得件数が多かった場合、少なかった場合や、解約数が多かった場合、少なかった場合などで想定のケースシナリオを作成していきます。 事業計画の精査 & FCFの算出(原価) 次に原価については、規模が大きくなればコストが下がるというケースもありますが、基本的には、実績ベースで原価率を算出し、売上高に比例して原価が上がっていくような計画となることが多いと言えるでしょう。 今回のケースでは、原価率30%で設定しています。 事業計画を精査する上で、異常値となっているものがないか調べる必要があるので、こういった原価率や販管費率、営業利益率の目安などは業界の水準などをネットなどで調べておきましょう。 事業計画の精査 & FCFの算出(販売ひ及び一般管理費) 次に、販管費についてですが、計画を立てる他に、スモールM&Aの実務においては代表が変わるケースを想定することが多く、代表交代を想定する際に修正すべき項目がありますので次のスライドで、修正項目について解説します。 特に事業計画を作成する側の売主にとっては、節税や経費の活用などで多く使っている費用を正常な値に戻すことで価値評価として高い評価になることもあるので、しっかりと正確に行う必要があります。 また、販管費の修正については、赤字会社の評価を行う際にも、修正後EBITDA、営業利益+減価償却、がプラスとなり、適切な評価が行えるケースがあります。 さて、販管費の計画、修正については次のような項目を精査していきます。 まず、人件費/法定福利費については、採用計画をもとに人件費を積んでいき、法定福利費も比例して引き上げていきます。 また、採用が進む際に、実務だけでなく管理等を行う人材の採用なども発生するので計画を立てる際には注意する必要があります。 外注費は事業や組織体制によりますが、売上高の成長とともに外注費が増えるケースも多くあるので、実績ベースの対売上高外注比率などを活用して見積ります。 広告宣伝費については、顧客獲得単価などの数値を用いて売上高から逆算するか、逆に、広告予算を設定し、売上計画を立てる方法が考えられます。 その他の費用は、実務上、役員報酬、接待交際費、会議費や旅費交通費など退任予定の代表が使っている部分については修正項目とし、実績値から控除することで修正後の「その他費用比率」を算出し、活用するケースが考えられます。 減価償却費については、償却期間などを確認し、それらを見積もるとともに、設備投資計画などがある場合には、計画とリンクさせて減価償却も見積り、反映していきます。 事業計画の精査 & FCFの算出(EBIT) 前ページのように販管費を修正し、EBIT(営業利益)を算出します。 事業計画の精査 & FCFの算出(NOPLAT) NOPLATは、「みなし税引後利益」のことですが、営業利益を実行税率を活用して税引き後の値とし、事業からのキャッシュフローを想定します。 注意点ですが、この時繰越欠損金などがある会社の場合は、欠損金を考慮して税引き後の値を求めます。 事業計画の精査 & FCFの算出(FCF) 求めたNOPLATから設備投資や運転資本増減額などのCFを考慮し、計画より各事業年度におけるFCFを算出します。 事業計画の精査 & FCFの算出(補足) 補足のページとなりますが、エクセルなどで事業計画を作成し、FCFを求めていく場合、計画に活用する値は、前提条件などの項目を設けて、それぞれ値を管理しましょう。 想定PLを作成する際は実務上、月次の計画を作成し、年度の数値にまとめていく形となります。 事業計画の精査 & FCFの算出(残存価値) 事業計画の精査 & FCFの算出の最後に、残存価値、Terminal Valueについて解説します。 残存価値は、予測期間以降のFCFの現在価値の総和のことを指し、今回の事業計画については、5ヵ年の計画だったので、6年目以降のFCFの現在価値の総和のことを指します。 DCF法の計算式では、残存価値はこちらの赤枠部分となりますが、予測期間以降のFCFをもとに、一定の永久成長率を加味した安定的なFCFを設定し、そのFCFを割引率で割り引いて求めます。 事業計画に戻りますが、残存価値を求めるための計画値には、実務上、予測最終年度の数字をベースとします。 予測最終年度の各数値に、永久成長率を反映させる形となりますが、実務上、0%とするケースが多くあります。 成長を織り込む場合は、売上高の成長に見合う運転資本増減額とし、FCF等を調整する必要があります。 ここまでで予測の5ヵ年及び予測期間以降のPL精査を行い、各年のFCFが求められました。 次の動画では、割引率の計算を行い、事業価値、株主価値を実際に求めていきます。