Your browser does not support our video. はじめに この動画では、DCF法の中でも最も重要となる割引率について解説します。 複雑な内容となりますが、ポイントを抑えつつ学習を進めていきましょう。 今回の学習ポイント 今回の学習ポイントはこちらになります。 ポイント1:割引率の算定方法について理解するポイント2:株主資本コストの算定方法について理解するポイント3:負債コストの算定方法について理解する それでは早速内容に入っていきましょう 割引率とは何か まず、割引率とは何かについて解説します。 割引率は、将来のFCFを現在価値に変換するために活用するものとなります。 そして、割引率には様々な別称がありますが、「資本コスト」と「期待収益率」の2つをここでは覚えてください。 割引率は、資金調達の源泉である「株主資本」と「有利子負債」のコストをそれぞれ求め、これらのコストを「株主資本」と「有利子負債」の構成割合によって加重平均することで算出します。 このように求められた資本コストあるいは割引率は、「WACC:Weighted Average Cost of Capital(加重平均資本コスト)」と呼ばれます。 割引率(WACC)の算定方法 WACCの算定方法についてはこちらのスライドのようになります。 負債コストと株主資本コストを加重平均してWACCを求めます。 WACCの算定ステップについては、 ステップ1で株主資本コストを算出し、ステップ2で負債コストを算出、求められた株主資本コスト、負債コストを式に当てはめてWACCを求めます。 株主資本コスト それではまず株主資本コストを算出していきます。 株主資本コストは、期待収益率と呼ばれることもありますが、株主資本コストは実務上、CAPM:Capital Asset Pricing Model(資本資産価格モデル)を使って求めます。 また、CAPMは投資案件におけるリスクと期待収益率(=株主資本コスト)の関係を理論的に導くモデルとなります。 CAPMの式はこちらのスライドの通りで、リスクフリーレートに個別企業のベータ値を掛けたマーケットリスクプレミアムを足して算出します。 次のスライドからこれらの値について個別に解説します。 リスクフリーレート まず、リスクフリーレートですが、実務上、リスクフリーレートには評価時点における「日本国債10年の年利回り」を活用します。 2022年11月23日時点では 0.246 %となっております。 場合によっては期間を設定し、平均値をとる場合などもあります。 ベータ値 次にベータ値について解説します。 ベータ値は、株式市場全体の株価の動きと比較した時に、個別銘柄の株価がどの程度動くかを表したものとなります。 ベータ値1が市場の動きとなりますので、ベータ値が1以上であれば、市場以上に動く傾向があり、ベータ値が1以下であれば市場の動きよりも小さく動く傾向があると言えます。 また、ベータ値がマイナスの場合は、市場と反対に動く傾向があると言えます。 ベータ値の求め方 次にベータ値の求め方についてお話します。 上場企業は日々株価がついているため実際の投資収益率から算定できますが、非上場企業は実際の投資収益率から算定することができないので、類似上場企業のベータ値を採用します。 上場企業のベータ値は、東証やSPEEDAなどから購入/取得するか、REUTERSの個別銘柄の指標からも確認できます。 また、これらのベータ値については、集計方法の違いなどにより若干値が異なることもあります。 取得したベータ値について、レバード・ベータと言われますが、類似上場企業のベータ値は個別企業の資本構成の影響を受けているため、評価対象企業に対して活用するベータ値を算出するときはこの影響を排除する必要があります。 これらの影響を排除したベータ値をアンレバード・ベータといいます。 複数の類似上場企業におけるアンレバード・ベータの平均値を算出し、評価対象企業の資本構成を掛け合わせて評価対象企業のベータ値を算出しますが、これをリレバード・ベータといいます。 マーケットリスクプレミアム ベータ値まで求められたところで、マーケットリスクプレミアムを求めます。 個別の投資を行う以上、リスクを負う分、リスクフリーの投資以上のリターンを期待することになります。 マーケットリスクプレミアムは、投資による市場リスクを負うことで得られる、リスクフリーレートに対する超過リターンの期待値となります。 イボットソン・アソシエイツなどがレポートを毎年販売してますが、実務上、5-6%程度で設定するケースが多くあります。 小規模リスクプレミアム 補足となりますが、上場企業など規模の大きな企業ではない中小企業などは、小規模であるが故のリスクがあると言えます。 そのため、CAPMで捉えきれないリスクとして、規模の小さな企業の評価で一定のリスクプレミアムを上乗せするものが小規模リスクプレミアムとなります。 こちらは実務上、1~4%程度を上乗せして調整することが多くあります。 負債コスト 株主資本コストが算出されたところで、負債コストを算出します。 負債コストは「有利子負債の調達コスト」となるので、基本的には借入の金利が負債コストとなります。 一方で、実際の金利が本来あるべき水準よりも低いとされる場合は、簡便的に長期プライムレートを活用する場合もあります。 参考となりますが、2022年9月9日のみずほ銀行が公表している長期プライムレートは 1.25%となります。 割引率(WACC)の算定方法 株主資本コスト、負債コストが求められたところで、WACCの式にこれらの値を当てはめてWACCを算出します。 Dと記載される負債の時価とEと記載されている株主資本の時価についてですが、評価対象企業の評価時点のデッド、エクイティの割合を使うよりも、評価対象企業が目標としている数値や、競合他社などの数値を参考に設定することが多くあります。