Your browser does not support our video. はじめに この動画では、企業価値評価手法の一つである年買法(時価純資産プラス営業権法)を活用して簡単な例を使いながら実際に企業価値評価を行なっていきます。 流れを把握すると共に、年買法での企業価値評価が自分だけでもできるようにしっかりと学習していきましょう。 今回の学習ポイント 今回の学習ポイントは、年買法による企業価値評価の流れを理解するになります。 実際の案件では、その案件に応じてケースバイケースで対応していく形となりますが、全体の流れと原理原則を理解することで、わからない部分のみを調べて個別案件に対応できるようになる、というところが学習のゴールとなります。 それでは、実際に年買法での企業価値評価をやってみましょう。 年買法とはどのような企業価値評価手法か まずは、おさらいからです。 年買法の計算式は、ご覧の通り、時価純資産に営業権の1-5年分を加えるものでした。 時価純資産の算出ステップ そして、時価純資産を求めるための計算式はこちらの通り、時価資産から時価負債を引いて求めるものとなります。 具体的な計算ステップとしては、まず初めに資産を時価評価し、次に負債を時価評価します。 そして、求められた時価資産と時価負債を計算式に当てはめて時価純資産を求めるというプロセスになります。 資産の時価評価 具体的な時価資産の求め方ですが、まず、資産の時価評価についてはこのスライドに記載の形で時価評価を進めます。 売上債権について、回収不能金額または、貸倒見積額を控除する、または、過去の回収実績や相手先の経営状態などにより一定割合を減額する形で時価評価します。 棚卸資産については、大幅な値引きが想定されるものや、品質の低下、陳腐化しているものがあれば処分価額で調整。 前払費用は、契約解除で現金回収が見込めるもの以外は減額し、現金回収が見込めるものは予定回収額とします。 貸付金については回収可能性に応じて評価し、未収入金、仮払金、その他流動資産等については、売上債権に準じて評価し、本来費用として処理されるものは減算する形で時価評価します。 有形固定資産については、再取得時の想定コストや売買事例などをもとに算定するか、または、鑑定士などによる評価を時価とします。 その他の償却資産は市場価格または再調達コストをもとに算出します。 無形固定資産については、市場価格がある場合、市場価格とし、ない場合は専門家による評価や取引事例を参考に時価評価します。 評価することが難しい場合は、そのまま減算する場合もあります。 その他の投資について、敷金については、契約解除時や現状回復にかかる見積費用を控除します。 差し入れ保証金は、貸倒見積額を控除した額とし、保険積立金については、その時点において解約した場合の解約返戻金相当額として時価評価していきます。 負債の時価評価 次に負債の時価評価ですが、退職給付引当金については、積立不足額があれば形状します。 その他の引当金については、評価の見直しがされた場合に関連する引当金を取り崩す形で時価評価します。 保証債務等がある場合においては、債務者が債務不履行になる可能性がある場合、保証債務の総額から債務者による返済可能額や担保により保全される額等の回収見積額を控除した額を負債に計上します。 それでは簡単におさらいができたところで、いよいよ、実際の例を使って評価を進めていきましょう。 資産の時価評価(実践) こちらに資産の記載がある部分を切り取った貸借対照表のサンプルがあります。 この貸借対照表に記載されている資産を時価評価に直す作業を進めていきます。 まず、こちらの表ですが、一番左に実際に貸借対照表に記載されている数字が記入されています。 そしてその隣に、時価評価することによって修正される額が記載されます。 さらに右には、時価評価で修正された額を加味した、最終的な時価評価額が記載されています。 そして、一番右は何をどう修正したのかのコメントが記載されます。 このフォーマットで作る決まりはもちろんないですが、お客様にもわかりやすく説明できるように資料も準備しましょう。 それでは上から見ていきましょう。 まずは、現金及び預金ですが、こちらは簿価でも時価でも変わり用がないので、そのままの評価とします。 次に売掛金ですが、売掛金は、回収不能金額や貸倒見積額を控除するか、過去の回収実績や相手先の経営状態などにより一定割合を減額するものでした。 今回の例では、売掛金のうち100万円分は信用力の低い取引先で回収見込みがないと仮定します。 なので、修正事項にマイナス100万円を記載し、売掛金は時価評価をすると2,000万円から1,900万円になることとなります。 次に商品及び製品については、500万円分の商品及び製品のうち、50万円分は保存状態が悪く、処分を行うことなると仮定し、こちらは50万円減算することとします。 前払費用については、年間一括支払いなど翌期以降のための支払いを行なっていたもののうち、キャンセルして戻ってくる回収額が全体の半額ほどと仮定し、100万円のうち、50万円減算するものとします。 未収入金については、資産を売却して発生している債権などをここでは想定しますが、買主の信頼度が高く回収不能となる心配はないものとして、そのままにします。 仮払金については、ないものとして流動資産の時価評価は以上とします。 次に固定資産ですが、有形固定資産は保有する土地について、地価の上昇で100万円ほど含み益が出ているものと仮定し、プラス100万円を時価評価とします。 無形固定資産については、電話加入権があったものと仮定しますが、電話加入権は現在価値はないものとして、全額減算します。 繰延資産にある創立費については、本来費用処理されるべきものであるため、こちらも全額減算します。 このように資産の時価評価を行うと、簿価47,805,952円から、時価46,000,000円に修正されます。 負債の時価評価 負債の部について修正部分を見ていくと、短期借入金は役員借入を想定していますが、こちらは経営者の責任として、M&A時に代表が全額債務免除するものと想定し、300万円全額分、負債を修正します。 負債ではもう一点、退職給付引当金があるものとしますが、30万円分の積み立て不足額があったものとし、30万円を負債として算入します。 負債の部については、以上のような修正で、簿価43,000,000円から、時価40,300,000円と修正されました。 時価純資産 時価資産と時価負債が求められたところで、求めた値を時価純資産の計算式にあてはめてあげると、時価資産46百万円から時価負債40,300,000円を引くので時価純資産が570万円と求められます。 営業権 さて、時価純資産が求められたところで次に、営業権を計算していきます。 この例では、営業利益が120万円でている会社だったとします。 営業利益120万円を1年分から5年分で計算すると、120万円から600万円でこのように計算できます。 年買法による評価 最後に、今回の例における算定結果ですが、時価純資産570万円に営業権120万円から600万円を足すと、690万円から11,700,000円という範囲で評価がでました。 参考となる評価自体はおおよその範囲で明示していく形となりますが、譲渡対象企業の業種を想定し、3-5年程度の営業権で取引がされるような業種だと考えられる場合、営業利益の3-5年分で算出することにより、最終的な算出結果の範囲が9,300,000円から11,700,000円と提示することができます。 資産や負債の時価評価については、ケースバイケースで対応することとなりますが、このように、年買法自体はあまり複雑ではない企業価値評価の方法となり、簡易的に評価する上では活用しやすいものと言えるでしょう。 一方で、営業権部分を何年分とするのが適切なのか、など、個別に検討すべきこともあるので、別途学んでいくDCF法の評価と照らし合わせるなどしてうまく活用することが求められます。