Your browser does not support our video. はじめに 今回の動画では、年買法(または時価純資産プラス営業権法)と呼ばれる評価手法について解説します。 今回の学習ポイント 今回の学習ポイントはこちらの3つになります。ポイント1、年買法の計算方法を理解するポイント2、時価純資産について理解するポイント3、実務における年買法の活用方法を理解するそれでは学習を進めていきましょう。 年買法とはどのような企業価値評価手法か まず、年買法とはどのような企業価値評価の手法かお話します。 年買法は、「時価純資産プラス営業権法」とも言われますが、計算方法が簡単なことから中小企業におけるM&Aではよく活用される企業価値評価の手法です。 一方、年買法は営業権の計算について「営業利益の1~5年分」程度という部分については、根拠に乏しいとされ中小企業M&Aの実務上、簡易的に企業価値評価を行う目的で活用される評価手法となります。 年買法で概算の企業価値評価を出すとともに、DCF法など他の企業価値評価の手法と組み合わせることで、より信頼度の高い企業価値評価が行えます。 これらを足し合わせたものが企業全体の価値である、企業価値となります。 年買法の計算式は、時価純資産プラス営業権法と言われる通り、時価純資産に営業利益の1~5年分である営業権を足したものが年買法による評価額となります。 次から、こちらの計算式に含まれる時価純資産と営業権についてそれぞれ解説していきます。 時価純資産 まず、時価純資産についてですが、前提として、帳簿上の価額を「簿価(Book-value)」と言い、時価評価した価額を「時価(Market-value)」と言いますが、会社が保有する資産と負債を現在の価値に直して評価し、そこから導き出された純資産が時価純資産となります。 時価純資産の算出ステップ それでは、時価純資産をどのように求めるのか解説していきます。 時価純資産は、時価資産マイナス時価負債となります。 具体的な時価純資産の算出ステップは、次の3ステップとなります。 ステップ1 :資産を時価評価しますそしてステップ2:負債を時価評価します。最後にステップ3:求めた時価資産、時価負債を計算式に当てはめて時価純資産を算出するというステップとなります。 資産の時価評価 それでは、時価資産と時価負債をどのように求めるのか、ここから資産と負債の時価評価の方法についてお話します。 もちろん、資産と負債の時価評価については会社によってケースバイケースとなりますが、一般的な科目についてこちらで解説していきます。 まず、資産の時価評価について科目別でお話していきます。 売上債権について、回収不能金額または、貸倒見積額を控除する、または、過去の回収実績や相手先の経営状態などにより一定割合を減額する形で時価評価します。 棚卸資産については、大幅な値引きが想定されるものや、品質の低下、陳腐化しているものがあれば処分価額で調整します。 前払費用は、契約解除で現金回収が見込めるもの以外は減額し、現金回収が見込めるものは予定回収額とします。 貸付金については回収可能性に応じて評価し、未収入金、仮払金、その他流動資産等については、売上債権に準じて評価し、本来費用として処理されるものは減算する形で時価評価します。 有形固定資産については、再取得時の想定コストや売買事例などをもとに算定するか、または、鑑定士などによる評価を時価とします。 その他の償却資産は市場価格または再調達コストをもとに算出します。 無形固定資産については、市場価格がある場合、市場価格とし、ない場合は専門家による評価や取引事例を参考に時価評価します。評価することが難しい場合は、減算する場合もあります。 その他の投資について、敷金については、契約解除時や現状回復にかかる見積費用を控除します。 差し入れ保証金は、貸倒見積額を控除した額とし、保険積立金については、その時点において解約した場合の解約返戻金相当額として時価評価していきます。 負債の時価評価 次に負債の時価評価ですが、退職給付引当金については、積立不足額があれば形状します。 その他の引当金については、評価の見直しがされた場合に関連する引当金を取り崩す形で時価評価します。 保証債務等がある場合においては、債務者が債務不履行になる可能性がある場合、保証債務の総額から債務者による返済可能額や担保により保全される額等の回収見積額を控除した額を負債に計上します。 このような形で、会社が保有する財産である資産と負債を時価評価になおし、時価純資産を求めます。 営業権 時価純資産が求められたところで、次に営業権の計算となりますが、年買法の計算式における営業権の計算については、通常営業利益の1-5年分と言われます。 一方で、実際にM&Aアドバイザリー業務を行なっていると営業利益の~3年分程度までが昨今の相場であると言えるでしょう。 また、SES事業やコンサル事業など人ベースのビジネスでは、2年分程度と低く評価されやすいといった特徴もあります。 実務における年買法の活用シーン 最後に、実務における年買法の活用シーンについてお話します。 年買法の活用シーン1ですが、スピーディーに大まかな企業価値評価を行うといったケースでの活用が考えられます。 売主からどのくらいで売れるか?という参考値をすぐに知りたいと言われた際などに活用することが考えられるでしょう。 活用シーン2として、DCF法と組み合わせて企業価値評価を行うとありますが、年買法での評価とDCF法での評価を組み合わせて両面から算定結果を見てあげることで、より信頼性があり、かつ明瞭な企業価値評価とすることができます。 活用シーン3について、昨今ではM&Aにおける買収を企業の成長戦略としている企業がたくさんありますが、M&Aの経験がある会社の場合は特にとなりますが、営業権の○年分までの評価で買収を進めるというような買収基準を定めている企業もたくさんあります。 なので、年買法はこういった企業の基準と対象企業の評価に乖離がないかなど確認するために活用できる方法にもなり得ます。